ポップ音楽のスターがジャズ作品を発表することは、よくあることです。この「今日の1枚」では、リンダ・ロンシュタットの3枚、そしてジョニ・ミッチェルの2作を取り上げてきました。
今回は男性ヴォーカリストの大御所ロッド・スチュアートの作品を取り上げます。私は2000年代後半に中古盤で購入したのですが、ロッドの「The Great American Songbook」は、全4作あわせて全世界で2000万枚を売り上げたそうです。特に今日取り上げる3集は、その中でも群を抜いた売り上げだったとのことです。
ロッド・スチュアートで印象深いことが二つあります。
ロック聴き始めの小学生終わりの時に、私の情報源であった友人が、フェイセズの来日のことを熱く語っていました。彼の兄いさんがロック好きであり、私の同級生はその影響を受けていたのです。フェイセズはどんなに凄いロックバンドなのか、また昨年にはテツ山内が加入したんだとかの話でした。私にとてはロッドよりもテツ山内の話が強く印象に残っていました。このフェイセズの来日については後年知ったのですが、事実上内部分裂していたようで、ロッドのバンドになっていたようです。
二つ目は1997年の話です。イギリスのウェンブレー・スタジアムで「SONGS&VISIONS」という音楽イベントが開かれました。プレスリー没後20年を記念したイヴェントで、ロックの歴史を振り返るのが趣旨でした。ロバート・パーマーやスティーヴ・ウィンウッドなどと共にロッドもこのイヴェントに参加していました。私がなぜこのイヴェントを強く記憶しているかといえば、愛する矢沢永吉が参加したのです。主催者は英語圏以外にロックを広めた人物として、永ちゃんに目をつけたのでした。永ちゃんがこのコンサートに臨む様子はドキュメント番組として、NHKで放送されました。それまでは永ちゃんを無視していたロッドを含むスター達が、永ちゃんがソロでプレスリーの「冷たくしないで」を、またロッドやボン・ジョヴィなどと「ハートブレイク・ホテル」をビシッと決めて歌うと、それまでの態度を一変させて永ちゃんに接していたのが印象的でありました。
さて本盤のお話。超一流のシンガーが、一流のプロデューサーとバック奏者と作った作品なので、安心して聴いていられる作品に仕上がっています。当時60歳近いロッドなのですが、声がよく出ています。「SONGS&VISIONS」に出演した時にはまん丸だったロッドが、本作品ではかなり体を絞っています。そんなことも、本作品に影響しているのかもしれません。