エルモ・ホープと言うピアニストは、プレスティッジに残した3枚の作品を通して、日本のジャズ・ファンにはお馴染みの存在と言えます。しかし不運も重なって彼は、陽の当たらないピアニストだったとも言える存在なのです。
日本盤解説の小川氏の説明によれば、もともとNY出身でNYで活動していたのですが、何の都合なのか1957年から1960年にかけて、彼は西海岸で活動していたのです。この時期のジャズ界は、まさに東海岸全盛時代だったのですが、彼は西海岸で白人に合わせるような演奏で日々を送っていたそうです。
そんな彼にこの時代唯一光が当たった瞬間が、この作品であります。ジミー・ボンド(b)とフランク・バトラー(d)という、これまたこの時期に西海岸で活動していた黒人ミュージュシャンと吹き込んだ、トリオ作品であります。
ゆったりした曲が多く、表面はサラッとしながらも、重い感情がたっぷりと表現されている作品です。その中にあってアップ・テンポの『マイナー・バーサ』での鬱憤をぶちまけたような演奏には、人間の本音が見えてくる身が震えるような演奏になっています。
全8曲中7曲がホープ作のもの。彼の作曲家としての実力も、はっきりと確認出来る作品です。
さてこの作品で彼に光が当たったと書きましたが、これはレコーディング機会に恵まれとの意味です。この作品にしても、超マイナー・レーベルからの発売でありました。この作品が一般の目に触れたのは、1970年にコンテンポラリーがハイ・ファイを買収してからのことでありました。