2009年1月5日掲載
Brad Mehldau           House On Hill
Nonesuch原盤           2002年10月録音

 僕が2000年代前半に好きで聴いていたピアニストの一人が、ブラッド・メルドー。そして手元にある彼の最新作は2006年発売のものであり、既に旧譜の仲間入りをしたもの。さらに購入から2年以上が経って初めて聴こうとしてクレジットをみてみれば、2002年録音であり拾遺集という趣のもの。Larry Grenadier(b)とJorge Rossy(d)とのトリオ時代の作品です。

20090105

 ペナンに住んでいいた頃には、ペナン・ヒルに時折行っておりました。ケーブルカーで行くのですが、丘の上は小さなホテルが一つありました。趣のあるホテルだったので、いつかは泊ってみたいと思いながら、ホテルのガーデンで鍋を食べただけでした。

 香港時代には、ヴィクトリア・ピークに度々行っておりました。山頂と名付けられてますが、丘の上。夜景を眺める名所で、いつも観光客で溢れているところです。

 みなとみらいに住むようになってからは、山手の丘が散歩コースの一部になっております。横浜を代表する高級住宅街です。

 この3か所には人が住んでおり、そこに生活する長所が、時折の来訪者である僕にもハッキリと分かります。しかし、丘の上だけあって、そこに生活する不便さが必ずあるはずでしょう。

 さてここからはこじ付けですが、メルドーのこの作品には、生活の素敵な一面と大変な一面が、合わさって流れていく感じがします。メルドーの演奏には技術的な高さがあるようですが、演奏派ではない人間にとっては、まるで川の流れのように、或いは丘の上に吹く風のように感じるところが、メルドーの演奏の魅力のように感じます。その川の流れには、また吹く風には強さと弱さが常に交錯しておりますが、それに身を委ねていると、どの瞬間も同じ感覚に襲われる気分になります。この不思議さが、メルドーの魅力に感じます。