ロルフとヨアヒム兄弟の作品です。青木氏の解説を読むと、この時期の東ドイツでは、以外にも自由にジャズが演奏されていたらしいです。この作品は3年前に世界初登場となった作品ですが、その経緯は面白いものです。
この作品を吹き込んだ後にヨアヒムは、ヤング・ジャズ・ミュージュシャンのコンテストに東ドイツ代表として参加し、そのまま西ドイツに居座ったそうです。その際にこのテープを持ってきており、彼はこのテープをNYのアトランティック・レーベルのネスヒ・アーテガンに送ったのです。何とアーテガンはこのテープのレコード化を決めたのでした。従って、本来ならばこの作品は、1960年代後半には世に出ていたことになります。しかしヨアヒムは評判となって、何とニューポート・ジャズ祭りに呼ばれ、その上にインパルスのボブ・シールが彼を気に入り、1967年にインパルスに作品を吹き込むことになったのです。そしてアトランティックは、このテープの発売を見送ったのです。
青木氏が紹介した何とも面白いエピソードですが、40年間もお蔵入りになってしまったのは、残念な限りです。クラウス・コッホ(b)とラインハルト・シュヴァルツ(d)との演奏です。
この時期にはコルトレーンの影響云々よりも、いろんなフリー系のミュージュシャンの影響を吸収しながら、この兄弟独特の味わいが加わっています。東ドイツでこの時期にフリー・ジャズがどのように受け入られていたかは知りませんが、この演奏は素敵なもの。
深く興味をひいたのは、2つのポイントであります。先ずはロルフのクラリネットの音色の綺麗さ。2点目は、演奏自体は揺れ動くフリー演奏なのですが、何か全体に美しく重たい示唆に富む詩の朗読を聴いているような、妙な感動であります。録音から40年経ってからの発売を、素直に喜んでおります。