2016年3月1日掲載
John Lewis      Jazz Abstractions
Atlantic原盤     1960年12月録音 

  ジャズの抽象概念という意味のタイトルの本作品の帯には、「鬼才シュラーとの共同作業で生まれた生涯の最高傑作。ワファロも自由闊達なプレイを展開。オーネット、ドルフィー参加の歴史的名盤」と書かれています。作曲家のガンサー・シュラーはメトロポリタン・オペラ楽団でフレンチ・ホルンを吹いていた方で、マイルスの「クールの誕生」への参加を通じてジョン・ルイスと知り合ったとのことです。この二人の友好関係から生まれたのが本作品です。参加しているのは、帯に書かれた方々です。ジョン・ルイスは演奏には加わっていないということです。 

 ドルフィー好き、オーネット好きと普段から言っていながら、本作品を入手したのが数年前の廉価盤というのが、恥ずかしい限りです。

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 廉価盤解説にある通り、ジャズとクラシックの融合、現代音楽とジャズの融和という試みが聴ける作品です。次のジャズの姿を、真摯に求めている作品です。商業的な成功は望めないものですが、ジャズが辿ってきた流れの中で、このような試みは必然的だったのでしょう。

 1曲目の「アブストラクション」はシュラー作のもので、現代音楽へのアプローチを試みており、オーネットの存在が活きている演奏です。
 2曲目は「ギターとストリングスのための小曲」で、ラファロとジム・ホールの存在が柔らかな中に怖さを感じさせています。
 続くのはジョン・ルイスの代表曲からの「ジャンゴ変奏曲」であり、3部構成となっています。ホールとラファロでの哀しいテーマ、その後ラファロが絡み、エディ・コスタのヴァイブとビル・エバンスのピアノが加わり不思議な世界に。二部は弦楽器で静けさと怖さを感じさせます。三部はホールとドルフィーのフルートが楽しげな会話をしております。
 4曲目はモンクの曲を使った「クリス・クロス変奏曲」です。オーネットとドルフィーの見せ場たっぷりであり、聴き応えあるものです。

 さてこの作品ですが、普段取り出して聴くかと言えば、そんなことはないでしょう。良い作品ですが、そんな作品です。