2016年1月9日掲載
Tony Fruscella     Tony Fruscella
Atlantic原盤        1955年4月録音

廉価盤CDの帯によれば「リリカルで美しい奏法で知られた伝説のトランペッター」らしいトニー・フラッセラの作品を、今日は取上げます。私は存じ上げなかったお方ですので、いつもの「新・世界ジャズ人名辞典」から彼の紹介を少しばかり。

 1927年にNJで生まれた彼は孤児院で14歳まで過ごし、15歳でトランペットを手にし、軍隊楽団で活動した後に、レスター・ヤングやマリガンのもとで活動していました。そして1955年にアトランティックに吹き込んだ初リーダー」作が、今日取り上げる作品です。

 「元祖コレクター・アイテム」らしい本作品は、アレン・イーガーが参加しております。

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 この作品の邦題は「トランペットの詩人」ですが、これはフラッセラの表現力豊かな語り口、静を保ちながら動を巧みに見せるところを、巧みに表したものと言えます。その動が効果的な「Salt」、ビル・トリグリアのピアノと共に憂鬱な気分を表現している「His Master's Voice」、この2曲が続く展開がこの作品の白眉と言えるでしょう。

 さてこの初リーダー作以降のフラッセラですが、麻薬禍のために第一線から退き、1969年に肝硬変と心臓病で息を引き取りました。公式なリーダー作品は、本作品だけです。