若い時から仕事にはさほど困らなかったウエスですが、初リーダー作である本盤の録音チャンスに恵まれたのは、36歳の時でした。
インディアナポリスのクラブで演奏していたウエスに触れたキャノンボール・アダレイが、オリン・キープニュースにウエスのことを伝え、すぐさまキープニュースはインディアナポリスに赴き、ウエスの演奏を聴き、直ちにウエスと契約したのでした。 1959年9月23日の契約から2週間後、NYのReeves Sound Studio で本作が吹き込まれました。オルガンとベースをバックにしてのトリオでの演奏です。
出だしの「Round About Midnight」「Yesterdays」が、やはり白眉でしょう。既にウエスの代名詞であるサム・ピッキングとオクターブの両奏法を身に付けており、存在感ある演奏に仕上がっています。
有名な話ですが、この録音にはケニー・バレルからギターとアンプを借りて臨んだウエスですが、そんなことは全く感じさせない内容です。
この録音後、亡くなる1968年までの10年弱の間、ウエスは数多くの作品を吹き込み、ジャズ・ギターの新たなスタイルを確立し、その後のギタリストに多大なる影響を与えました。大物になっていく姿を、この初リーダー作にしっかりと確認できます。