2016年10月8日掲載
Von Frerman          Serenade & Blues
Nessa原盤               1975年6月録音

 一般的にはチコ・フリーマンのお父さんとして知られているヴォン・フリーマンの作品です。 1922年にシカゴに生まれた彼は、1940年代にはホレス・ヘンダーソン,1950年代にはサン・ラのグループで活躍し、兄弟でバンドも組んでおりました。そこにはアーマッド・ジャマルやアンドリュー・ヒルなどのピアニストも参加しておりました。1970年代に入るとシカゴをベースにして活動しておりました。しかしレコーディングの機会に恵まれたのは遅く、初リーダー作品は1972年のことでした。その後はNessaなどからコンスタントに作品を発表しております。

 さて私とこの盤の出会いですが、CDとしてNessaから発売されたのが1989年のことで、この年の渋谷のジャズ専門店のCD新譜コーナーでした。店主と他愛のない話をしながら私がこの作品に手を出し、「チコ・フリーマンの親父さんか」と呟きました。店主は恐らく、純粋な新譜と言えない本作は売れ残ってしまうと考え、私にこの作品をプッシュしてきました。テナー・サックス好きの私のことを思っての店主愛と良き方向に考え、購入したのでした。恐らくは10枚ほど購入した中の1枚でしたので、自室で聴いた時には締りが悪い演奏との感想で仕舞い込んでしまったと思います。

 30年近くが経ち、改めてこの作品を手にして、驚いたのはピアノにジョン・ヤングが参加していること。プレスティッジで好きなピアニストと言えば私はジョン・ヤングを挙げるのですが、当時はまだジョン・ヤングの存在に気付いていなかった時期でした。主役のヴォンさんとヤング、二人に焦点を当てて、聴いてみます。

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 これがライブ盤ならば、リラックスしたブルース演奏とも言えるのですが、スタジオ録音でここまでリラックスしていると、ブルース・マンの息抜きとも感じてしまいます。またピアノの録音レベルが低くいため、上手くヴォンに合わせているなという印象に留まりました。

  ではこの作品は駄作なのかと言えば、そうではない。シカゴに留まったテナー吹きが、同じくシカゴを出ようとしないピアニストと共に、シカゴの小さなスタジオで、 ブルースで語り合った作品として、本作は十分な価値があるものです。

 この作品が出来あがるまでのストーリーを勝手に考えながら、微笑ましく聴き終えた1枚です。