2009年8月16日掲載
Yosuke Yamashita        Sakura
Venus原盤                     1990年5月録音

 NYでの3年目の活動を行っていた山下洋輔が、セシル・マクビー(b)とPheeroan akLaff(d)という人と吹き込んだ作品です。さて「桜」というタイトルでお分かりの通り、「月の砂漠」や「兎のダンス」などの日本の古い歌を題材にしている作品です。どんな風にこのトリオがこの題材を扱っているかが、この作品のポイントとなります。

20090816

 本来は『月の沙漠』と書くのだが、『月の砂漠』と誤記されることが多く、この山下盤でも『月の砂漠』と記載されている。加藤まさお作詞、佐々木すぐる作曲のこの歌は、童謡として幅広い日本人に好かれている曲である。この山下トリオはこのメロディを、重厚な空気感で聴かせている。何とも言えない重さである。作品全体を通しても、重さがテーマであろう。日本人に慕われてきたメロディを、見事に山下の世界に引きずり込んでいる。しかしその極めつけの『月の沙漠』の存在が無ければ、この作品は語られることがないのでは。