マックス・ローチがリーダーとなり吹き込まれたピアノ・トリオですが、レーベルが意図した主役はピアノのハサーン・イヴン・アリであります。
このハサーンに関しては、恐らくこの作品に触れた方しか知らないと思います。数年前に廉価CDで購入した私には当然初めての方、いつもの通り「新・世界ジャズ人名辞典」から経歴を紹介します。
1931年にフィラデルフィアに生まれたハサーンは、15歳の時にプロ活動を始め、1950年代に入ってからはクリフォード・ブラウン,マイルス,JJジョンソンなどと共演しました。1964年に残した本作の他には、翌年にも録音しましたが、未発表のままとのことです。
更にCD封入解説の後藤さんによれば、1964年にNYに出たハサーンは旧友のドーハムを頼り、マックス・ローチを紹介され、本録音になったとのことです。
またオデオン・ホープという方によれば、「コルトレーンが60年頃に完成した和声概念を、ハサーンは1950年代半ばには体得していた」とのことです。 そんなハサーンの演奏が聴ける唯一の作品を聴いてみます。
解説の後藤さんはハサーンの演奏スタイルを「モンク,パウエル,そしてテイラーを足して3で割った」と評してます。当たっていると思いますが、それは良い意味ではなく、この3者の雰囲気だけはあるが、ハサーンの個性は感じられないとの意味です。
この人の個性は、トリオではなくソロを聴かなければねと感じていたら、最後はピアノ・ソロ。しかしながら、難しそうなことを考えていそうなのが分かるだけ。
やはりこの作品の主役はローチであり、彼のドラムの上手さに感心して聴き終えました。