パウエルがフランスからアメリカに戻ったのは1964年8月のことですから、本作はパリ時代のパウエルの最後の時期の作品になります。ジルベール・ロヴェール(b)とカール・ドネル(d)との録音です。ネットで検索すると、多くの方が『ディア・オールド・ストックホルム』を絶賛されております。
曲によって録音のバランスが悪く、ドラムの音がやたら目立っているものがあります。『ディア・オールド・ストックホルム』もそんな曲で、ブラシの音がやたらにでかい。パウエルのピアノは、哀愁メロディの極みであるこの曲に助けられている内容です。
今回聴いて気に入ったのは、『言い出しかねて』であります。サラッとした演奏で、片思いの気持ちをつい友達に言ってしまい、思わず苦笑いをしてしまったようなものです。さてこれを聴いた時には、本当にこの曲が『言い出しかねて』かと思いました。そう考えたら無性にブラウニーの演奏を聴きたくなり、名盤であるあのライブを引っ張り出しました。こちらの方は、友達に片思いの気持ちを、涙ながらに延々と嘆いているもの。パウエルとブラウニーの表現の仕方を、思わず楽しみました。