ウォルター・ビショップ・Jr.が、ブッチ・ウォーレン(b)とジミー・コブ(d)と吹き込んだ作品です。「スピーク・ロウ」がビショップの表名盤ならば、この「サマータイム」は裏名盤といったところです。何しろマイナー・レーベルからの発売なので、オリジナル盤はかなりの高価で取引されています。それが1980年代後半にフレッシュ・サウンドから復刻されました。さらにDIWから1989年にCD発売され、SJ紙に大きく取り上げられ、世の中に知られるようになった作品です。
私が持っているのは、DIWから発売されたCDで、オリジナル同様に12曲収録。インターネットから得た情報では、その後にフレッシュ・サウンドから4曲追加となって、CD発売されているとのことです。
音質については、贅沢が言えないでしょう。マイナー・レーベルは録音にそれほどのお金が掛けられなかったのでしょうから、もともとの録音状態が良くなかったはず。さらにはテープの保管状態も、酷い状態だったのでは。強いて苦言を呈せば、この復刻に際してデジタル処理を行い音質の向上を図ったのでしょうけど、それにより音が何やら固くキラキラしたものになっています。
さて内容。誰もが知っているスタンダードを通して、ビショップの魅力的なブルース感覚が聴き取れます。先に取り上げたパーランと同様に、スタンダード作品の魅力を感じます。そしてこの両盤を聴き比べれば、二人のブルース感覚の違いも、スタンダード曲を通じて感じ取れます。ビショップの明るいタッチでの黒人ブルース表現は、素敵ですね。
スタンダード曲ばっかりと書きましたが、『ドゥティーズ・テーマ』という、殆ど知られていない曲が入っています。国内盤解説を書いた寺島氏、そしてその文中で紹介されたレコード店でのこの作品へのメモ、この二つともこの曲を絶賛しています。それを読んでから聴いたのですが、ひねくれ者の私は、他の曲を褒めようと考えてました。しかし結局、この『ドゥティーズ・テーマ』が印象に残っています。やるせないメロディを、ビショップ色でもって、聴く者に届けてくれています。