メキシコで療養中のところ、1988年3月20日に無くなったギル・エヴァンス。そのニュースは、3月21日の朝のNHKラジオのニュースで伝えられました。それからすぐにこの作品の発売が決まったそうです。
内容は先に取り上げた「Bud And Bird」での拾遺集です。
この作品でもって、この The Monday Night Orchestra の発売された作品は最後になります。全4作品。それから20年以上経過した今、このオーケストラの活動は、殆ど語られることはありません。このオーケストラがジャズの流れを変えたわけでもないので、ある意味当然のことなのでしょう。
しかし、こうやって聴いてみると、この時期ならではの存在意義が、オーケストラにはあったのではないかと思います。参加メンバーは、黄金時代のジャズを聴いて育ってきた面々であります。そんな彼らは、ある人はロフト・ジャズであったり、あるいはフュージョンであったりと、いろんな形で1970年代に活動してきた方々です。ジャズの混沌時代でもあったそんな時期を過ぎて、このエヴァンスのオーケストラでもって、伝統の中に革新を加味したジャズを存分に楽しんでいる姿が聴き取れます。そんな機会を作り上げたエヴァンスは、最後まで偉大な人だったのでしょう。
僕にとっての好んで聴いたエヴァンスはこの時期だけなのですが、偉大な人の一部分だけでも気に入って聴けたことになります。