若く適度にファンキーなヒギンズさんを、先月取り上げました。今月は、初老ヒギンズさんを取り上げます。レイ・ドラモンド(b)とベン・ライリー(d)とのトリオ作品です。
2月中旬にパシフィコ横浜でAVフェアが行われ、私も覘いて来ました。日本製品の展示会なので高い興味は無かったのですが、有名評論家の話が聞けるので、幾つかのブースに参加しました。そこで聴けたのは良い音でしたが、部屋に戻って自分のオーディオと聴き比べると、音の違いの大きな要素は、部屋のエア・ヴォリュームの違いであると感じました。フェア会場での、あれだけ広く、あれだけ天井の高い部屋で聞ける個人と言うのは、そうは居ないことでしょう。大きな部屋での音の豊かな響き具合は、実に羨ましい限りです。
さて、本盤。フェアでの部屋で聴きたい作品です。私の部屋でも、ピアノの魅力が詰まった音の広がりを堪能しました。しかしあのフェアで聴いたならば、もっと凄い音で聴けたことでしょう。
そんなピアノ演奏の内容は、円熟味からくる、落ち着いた優しい演奏です。この境地まで達したヒギンズさんを想像して聴く分には、楽しめる内容。しかし、単にピアノ・トリオ作品として聴く場合には、ベースとドラムに刺激性を欲しかったです。二人が円熟ヒギンズに歩み寄って、渋い演奏に終始していたのが残念なポイント。ヒギンズを若返らせるようなプレイを二人がしていたならば、もっと楽しめる作品になったことでしょう。