多彩な打楽器を操るカヒル・エルザバーのリーダー作品については、この「今日の1枚」でマレイとの共演作とボウイとの共演作を取り上げてきました。私はこの2作品を共演者目的で購入したのですが、そこでのエルザバーさんの演奏を気に入り、2009年頃に今日取り上げる作品を購入しました。
ベースのマラカイ・フェイバース、ピアノとサックスのアリ・ブラウン、そしてファラオ・サンダースとの演奏作品です。
私にとってアリ・ブラウンとは、知っていてさほど深く知らないお方です。1944年にシカゴで生まれた方です。1960年代前半まではR&Bバンドでピアニストとして活動し、1965年にはサックスに切り替えたそうです。その後はピアノ演奏することもありますが、主にサックス奏者として活躍していました。またその活動歴はシカゴ出身とあってAACMへの参加を通じて、また1970年代はロフジャズで活躍する方々と共演を重ねてきました。私はそんな人たちの作品に参加しているアリ・ブラウンの演奏に触れてきたわけですが、お恥ずかしい話ですが、レコード・CD箱をひっくり返さなければ、それがどの作品なのか即答でいない有様です。
そんなアリ・ブラウンは1989年から本作品の主役であるエルザバーのバンドのメンバーになっていました。そのアリ・ブラウンは本作品ではピアノを主として演奏しています。その存在感が誠に強烈であります。
1曲目の「枯葉」は20分近い演奏時間の曲ですが、アリ・ブラウンのピアノ演奏が炸裂しています。当然ながらピアノ1本のミュージシャンと比較すれば、演奏テクニックに流暢さなどはなく、どちらかといえば朴訥した感じの演奏です。一音一音づつ力強く鍵盤を叩いていく演奏は、清々しいまでにアリ・ブラウンの思いを感じることができる内容です。そしてそこにリーダーのエルザバーのドラムとマラカイ・フェイヴァースのベースが、重厚に絡んでいくわけですから、滅多に聴けないタイプの「枯葉」演奏となっています。
この「枯葉」の演奏だけで、この作品は私にとって重要な作品になっています。