2006年8月1日掲載
Barney Wilen     Tilt
Vogue原盤      1957年1月録音

ネットで調べてみると、今では当たり前にこの作品が入手できる状況なのに、少し驚きました。
 私が購入したのは1987年のこと。Vogue からの再発でしたが、LPとCDで発売されたと記憶しております。長らく、再発から縁がなかった作品らしく、LPは飛ぶように売れておりました。何しろオリジナルは10万円以上。

 1937年にフランスのニースで生まれたバルネは、伯父から送られたアルト・サックスを贈られ、独学でマスターしたのでした。いつテナーに転向したかは分かりませんが、1950年代中期にパリに移り、多くのアメリカのミュージュシャンと共演を行いました。そんな時期に吹き込まれたのが、今日取上げる作品。

 2つのセッションから構成されております。Maurice Vander(p),Bibi Rovere(b),Al Levitt(d)とのセッションから5曲。Jacky Cnudde(p),Bibi Rovere(b),Charles Saudrais(d)とのセッションから4曲。前者はガレスピーの曲など、後者は全てモンクの曲であります。

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 幾種類かのタイプのテナー・サックスが聴こえてきます。つまり、まだまだ19歳のバルネは、アメリカのジャズ奏者の演奏を、真面目にコピーしている段階なのでしょう。そんな意味合いは、ピアノのヴァンデールの演奏にも伺えます。ヴァンデールの1961年吹き込みの作品と比べると、まだ個性が確立されていない状況です。

 ここまで書くと、このバルネの作品を悪く書いているようですが、この時代のフランスのジャズの状況が伺える作品であり、若者の真摯な演奏姿勢が感じられるものです。

 最後に自分の記憶力の悪さを書きます。ヴァンデールの1961年盤「Jazz At The Blue Note」では、ヴァンデール初聴きと書きました。実は彼の1999年録音盤を、2001年に取り上げていたのです。こんな間違いは、既に1600枚を超えた「今日の1枚」の中には、多数あることだと思っております。