2006年7月30日掲載
Roland Kirk      Third Dimension
King原盤          1956年11月録音

 ローランド・カークのデビュー作品であります。この当時で21歳、ジャケを見ますと管楽器を3本銜えており、既にこの当時から、このスタイルでした。この作品は、カークの地元オハイオ州に本拠をおく King レーベルへ吹き込まれました。しかし全く話題にならずにおりました。
 カークの2作目は1960年にアーゴへの吹込みであります。しかし、この1作目の存在を誰も知らなかったために、長らくアーゴへの吹込みが、カークのデビュー作とされてきました。つまり、アイラ・ギトラーなど著名なジャズ関係者さえも、この作品の存在を知らなかったのです。
 その後どんな経緯かは知れませんが、ベツレヘムから再発され、世に知られる存在になったのです。ジェームス・マディソン(p),カール・ブルーイット(b),ヘンリー・ダンカン(d)との録音です。

20060730

 R&Bレーベルへの吹込みだけあって、軽いノリのR&B演奏に終始しております。カークの複数本銜え演奏らしきものも聴けますが、多重録音の曲もあります。デビュー作品と言うことでの、価値がある作品と言えますが、この時期のカークを聴けるのが嬉しいのも事実です。

 さて「新・世界ジャズ人名辞典」で紹介されている、カークの複数本銜え演奏に関することを、少し引用します。カーク16歳の時に、3つの楽器を1度に演奏する夢を持ち、すべてのリード楽器で試みたそうです。その結果、スペインの軍隊が世紀末頃に使った古いサックス2本と、ストリッチとマンゼロを選びました。サックスの1本はアルト・サックス同様で、もう1本はソプラノに近かったそうです。これらで演奏すると、テナー・サックスに似た音が出たとか。そして運指を工夫して吹くと、3つの音がハーモニーとなって出てきたそうです。

 そんな試みから5年を経過しての演奏が、このデビュー盤に収まっております。