アメリカ復帰後にクリスはプレスティッジに、1966年10月「this is criss」,1967年3月「Portrait of Sonny Criss」,1967年8月「Up, Up and Away」と、ほぼ半年間隔で吹き込みを行ってきました。アメリカ復帰4作目の本盤も、ほぼ半年間隔での録音になります。ピアノは引き続きシダー・ウォルトン,ベースにボブ・クランショウ、そしてドラムにアラン・ドウソンを入れての、クァルテット編成の作品です。
1991年に国内盤CDで購入したのですが、解説を書いているのは岩浪氏です。「本アルバムはクリスの代表作といっていい傑作だ」と述べております。言い過ぎではないのと思いながら、久し振りにこの作品を聴いてみます。
1曲目のポップス曲『the beat goes on』を、何気なく熱気あるブルース・フィーリングで、クリスは演奏しています。ピアノも効果的。黒人差別を歌った曲だという『goergea rose』でのクリスのアルトは、ひたすら明るく楽しいもの。邦題は『ララのテーマ』というらしい3曲目『somewhere my love』では、口笛感覚のクリスの演奏で、気が休まるもの。アドリブでのメロディの心地よさが堪らないものです。クリスのブルース曲『calidad』では、クリスのブルース・フィーリングはこんなものではないだろうと、思いました。作品中唯一のスタンダード『yesterdays』では、やけに激しく迫るクリス。しかし曲の雰囲気を保っているのは、流石であります。最後は1967年の大ヒット曲らしい『ode to billy joe』です。クリスのアドリブでのメロディ・ラインが、原曲のそれを上回っているのは、どう考えればいいのでしょうかね。
こんな感じの作品。良い出来の作品です。しかし「Portrait of Sonny Criss」や「Up, Up and Away」といった秀逸な作品が、この録音の前にあるだけに、岩浪さんの「本アルバムはクリスの代表作といっていい傑作だ」言い過ぎでしょう。