2006年7月6日掲載
Sonny Criss      Up, Up and Away
Prestige原盤      1967年8月録音

 この作品は、1988年に国内盤CDで購入しました。村上春樹氏が解説を書いておりますが、これが面白い。パーカーの葬式を舞台にした、アルト奏者のお話なのである。「新橋の芸者に生ませた隠し子キャノンボール」とか、「知恵遅れのルー・ドナルドソン」とか、書きたい放題であります。この話を続ければ全文を書くしかなく、それは勘弁して欲しいので、本作の話題に移りましょう。

 アメリカ復帰後に、「this is criss」や「Portrait of Sonny Criss」と好調な作品を発表してきたクリスの、アメリカ復帰第3作であります。ピアノはシダー・ウォルトンに変わっており、またギターのタル・ファーローが参加しております。ベースには、ボブ・クランショウ。ドラムはレニー・マクブラウン。1960年代末の、ジャズ喫茶人気盤だった作品です。また Don Schitten のジャケット写真が印象的であります。

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 スピード感と切れ味が抜群のタイトル曲。ギターとピアノのイントロでのアタックも印象的です。そして、吹きまくりクリスの演奏には、哀しみと寂しさを隠しながら、明るいそぶりで天まで突き抜けようとする姿を感じます。 続く『willow weep for me』では、テーマをひたすらに吹き、一転して哀しみと寂しさを表に出していく内容であります。そして3曲目のタプスコット作の『this is for benny』では、情念溢れる物語を聴かせてくれます。ドラマチックな展開に心打たれる内容。

 LPでのA面のこの3曲の圧倒的な出来栄えを聴けば、ジャズ喫茶での人気振りが簡単に想像出来ます。さらにB面も、なかなかのもの。真に心打つ愛聴盤として、この作品を聴き続けている人が多いことでしょう。