2006年7月20日掲載
Masahiko Sato      Palladium
Express原盤       1969年録音

 ピアニストの佐藤允彦の初リーダー作品で、ベースに荒川康男、ドラムに富樫雅彦を迎えての作品です。
 購入理由は、名のある日本のピアニストなので、1枚くらいは聴いておこうかとのもの。そして富樫雅彦の参加であります。不慮の事故にあう前の、彼の演奏が聴きたかったからです。

 さて佐藤氏の、恐らくは発売当時のコメントに、「インプロヴィゼイションのための既存の制約を、一つずつ取り去って行って最後に残された空間に我々だけの言葉で詩を創ろう」という言葉があります。自然は乱雑を好む、という言葉を中学の理科の時間に聞いた記憶があります。ジャズの世界で、佐藤氏のコメントのような気概で演奏されたものは、独り善がりのフリー・ジャズというものになってしまうと思います。

 とやかく言わずに、聴いてみましょう。

20060720

 1曲目の『オープニン』」は、意味が分からず22秒。2曲目の『ミッシェル』は、3人が慎重に演奏しだし、考えの深さだけが伝わってきました。途中から、聞き覚えのあるメロディが、端っこに現れてきます。やがてこの曲は、ビートルズのだったのかと分かる次第でした。そして15分を聴き終えたら、妙な郷愁を感じました。3曲目の『ザルツブルグの小枝』は、妙な楽しさが伝わってきました。4曲目の『パラジウム』で感じたのは、妙なブルース感覚でした。これは考え過ぎの聴き方だったかも。5曲目の『スクローリン』では、妙なリズム感覚への共感。富樫氏は、不慮の事故の前は、繊細で緻密なドラミングでした。

 さて「妙な」という表現が続きましたが、4曲続くと、この感覚は刺激的という表現が正解なのかとも思いました。静かな空間に刺激を注ぎ込むのが、この作品の狙いだったのかな。そして最後の『クロージング』は、心臓の鼓動で終わりました。