2006年7月21日掲載
Mark Murphy     Midnight Mood
SABA原盤         1967年12月録音

 マーク・マーフィーと言えば1961年録音の『Rah』が有名ですが、今日取上げる作品も彼の代表作だそうです。
 1932年NY生まれの彼は、初めはピアニストとしてプロ・デビュー。いつ頃から歌手が主になったのかは知りませんが、少なくとも『Rah』が吹き込まれた1961年には、歌手として活動していたのでしょう。その後、1964年から10年間、マーフィーは欧州で活動しておりました。そんな時代に吹き込まれたのが、この作品。クラーク=ボランのビッグ・バンドとの録音です。

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 マーフィーの歌声をコーヒーの味に例えるならば、決してブラック・コーヒーではない。ミルクを少し入れたことによって得られるマイルドさが、歌声の中にある。そして、砂糖も入れてある味だ。それも上品な砂糖の味。優雅な甘さが、歌声から響いてくる。 こんな印象を、この作品から感じました。実を言うと、彼の歌声をどう表現しようかと、考えておりました。コーヒーでも飲んで考えを進めていたら、こんな表現になった次第です。

 さてこの作品ですが、メインは当然マーフィーの歌声。他には、バックの演奏のリズムの切れの良さと、選曲の良さの2点。その日の気分で、この作品から勧める曲は、変わってくることでしょう。今日は、エリントンの『ジャンプ・フォー・ジョイ』を挙げておきましょう。切れの良さに、マーフィーの歌声がマッチした内容になっております。

 さてコーヒーに話を戻しますと、ブラック・コーヒーを25年間に渡って、愛飲してまいりました。しかし、ここ数年で、ミルク入りコーヒーに転向。これは胃への影響を考えてのことでしたが、今では苦味にマイルドさが加わった味でなければ、ダメになりました。そしてもう少し経てば、砂糖が入った上品さを求めだすかも知れません。ジャズ・ヴォーカルは男性ものに行き着くとの言葉があるそうですが、果たして如何でしょうか。