1962年10月に「When there are grey skies」を吹き込んでから、レッド・ガーランドは半ば引退状態にありました。そして1966年には生地ダラスに退いておりました。そんなガーランドが1971年にNYに赴き、ドイツのレーベルに吹き込んだのが、本作品であります。
僕が丁度ジャズを聴き始めた頃、ガーランドはすぐに好きなピアニストになりました。全盛期の時代の作品を買っていたのですが、丁度その頃にこの作品がLPで再発されておりました。僕は、引退状態で吹き込んだ腑抜け作品と決め付けて、買わなかったのです。今振り返れば、その時の考えは青かった。ジャズの魅力の一つは、演奏を通して、そのミュージュシャンの生き様に触れることであります。好きなミュージュシャンであれば、駄目になっていく過程も、充分聴くべきものがあるはずなのです。
年月を経て、今回のCD化で、ようやくガーランドの復帰作に手を伸ばすことになりました。サム・ジョーンズ(b)とロイ・ブルックス(d)との録音です。
因みに、アウフ・ヴィーダーゼーンとは、ドイツ語でさよならとの意味。復帰作ならば、違う意味の言葉を選ぶと思うのですが・・・。
ガーランドの魅力は、力強いタッチで奏でられるメロディ・ラインであります。ブロック・コードなどの武器も、強力なもの。また決して過多にはならないが豊かなブルース・フィーリングも、大きな魅力であります。
そんなガーランドの魅力は、復帰作のこの盤にも詰まっております。確かにそれは全盛時代と比べれば、弱くはあります。しかし、この時のガーランドの状況が溢れているもの。だからこそ魅力ある盤となっているのでしょう。9分を超えるガーランド作のスロー・ブルース『old stinky buit』での演奏は、この作品の発売当時には、ガーランド・ファンを感激させたことでしょう。
しかしながら、この作品以降ガーランドは再び演奏から遠のきます。再び演奏を再開するのは1977年のことでした。