2006年6月16日掲載
Curtis Fuller       with Red Garland
New Jazz原盤    1957年5月録音

 1992年に国内発売されたCDを持っておりますが、解説は悠雅彦氏が書いております。LP発売時のものを使用してあるとなっているので、書かれているのは1970年代のことなのでしょう。兎に角、固い文章。ハード・バップとファンキー、それに黒人の生活環境と時代性を重ね合わせて、読むのを放棄したくなる文章が続いております。やはりジャズについての論を張るには、このような書き方が必要なのかとも思いました。しかし最後には、マス目を埋めるためにお得意フレーズを書いているのではと疑ってしまいました。

 それでも、カーティス・フラーのこの時にプレスティッジへの録音の経緯については、柔らかい文章で書かれております。少し引用。
 NYに出てきたばかりのフラーの演奏に注目したボブ・ワインストックは、1957年5月にフラーに3種のセッションを用意して、華々しいスタートを切らしたのでした。先ずは10日にクイニシェットのセッションに参加させ、フラーの心理を和らげようとしたのです。その時の録音は、「Paul Quinichette's New Stars」という作品で発表されました。そして翌日にはリーダー・セッション。それは「New Trombone」というタイトルで発表されています。そしてそれから3日後に発表されてのが、本作品です。「New Trombone」でも一緒だったソニー・レッド(as),それにガーランド(p),チェンバース(b),そしてルイ・ヘイス(d)が加わったクィンテット編成であります。

20060616

 優しいフラーさんなのであろうと感じたのは、何もトロンボーンの音色の暖かさによるものではなく、その演奏内容によるもの。『ストーミー・ウェザー』でのバラッド・プレイでは、暖かいフラーの演奏が堪能出来ます。これがアップ・テンポの曲になると、控えめのフラーさんと感じてしまう。これもトロンボーンの響き方に起因しているのではないのでしょう。

 作品全体の印象として弱ってしまったのが、今回聴いて最も気に入ったのが『ムーンライト・ビカムズ・ユー』であること。これはレッドのアルト・サックスをフューチャーしたもので、フラーさんはテーマで絡むだけのもの。まぁ、誰がリーダーと考えずに、プレスティッジのセッションと考えれば、ガーランドの好演も楽しめて、なかなか気に入る1枚なのです。