あくまで私見ですが、日本で最も聴かれているソニー・クリスの作品は、今日取上げる作品なのではないでしょうか。クリスにはいくつかの絶頂期がありますが、その中の最後の絶頂期がこの録音から自殺する迄の2年間であります。
クリスは1968年にニューポート・ジャズ祭に出演後に、ノイローゼのために演奏活動が制限されておりました。「I'll Catch the Sun! 」という有名盤を吹き込んでいましたが、その活動は僅かなものでした。その後1974年に欧州楽旅を行いました。その時の記録は、ジョルジュ・アルヴァニタスとの演奏が、フレッシュ・サウンドに残されてコメント作品おります。そして1975年から本格的復活となったのです。まず2月24日に「Crisscraft」のセッションを行い、その1週間後に吹き込まれたのが、本作品であります。
バリー・ハリス,リロイ・ヴィネガー,そしてドラムのレニー・マクブラウンとの録音です。
ガレスピーが1946年に第二次ビッグ・バンドを結成し、アフロ・キューバン・リズムの色彩を強く押し出しました。そのコンセプトをより強くするために、ガレスピーは編曲家にウォルター・ギル・フラーを迎え、またコンガ奏者にチャノ・ポゾをキューバから迎えました。このチャボ・ポゾがガレスピー楽団在籍中にギル・フラーの協力を得て書いた曲が『ティン・ティン・デオ』であります。
このエキゾチックな曲は、勿論ガレスピーの演奏が有名なもの。またペッパーの演奏も、ペッパーらしさでており、なかなかのもの。
こんなように名演奏目白押しのこの曲ですが、ここでのクリスの演奏も、この曲の名演の中に堂々と加わる出来栄えです。人間の弱さというか、悲しみというか、人間の内面が如実に表現されている演奏です。それは『エンジェル・アイズ』でも同様の言えることであります。この人間らしさを多くのジャズ・ファンが共感し、この作品に愛着を覚えているのでしょう。