2006年1月12日掲載
Stan Tracey       With Love From Jazz
Columbia原盤       1967年10月録音

 何度も書いてきましたが、つい10年ほど前までの僕にとっての1960年代の欧州ジャズ作品は、渋谷ジャロさんのオリジナル盤用壁展示スペースで鎮座している存在でした。しかも値段は恐ろしいもの。これがジャズ専門店に通うチャンスがあまり無い方々には、1960年代欧州ジャズはごく一部の作品を除いては、その存在すら知らなかったことでしょう。1960年代欧州ジャズ愛好家は、オリジナル盤手を出している100人ほどしか日本に居なかったのです。

  当然は僕には無縁でしたが、ここ何年かのイギリスを中心としたCD化には目を見張るものがあり、このコーナーでスタン・トレーシーの作品を2枚も取上げられるようになりました。前に取上げたのは、1965年録音の「Under Milk Wood」。今日取上げるのはそれから2年後の録音の作品です。

 Jackie Dougan(d),Dave Green(b),Bobby Wellins(ts)というクァルテット編成です。曲によって、メンバーが若干入れ替わっております。

20060112

 「Under Milk Wood」でも感じたとおり、モンク色が漂っている演奏であり、数曲では強くそれを感じます。そんな曲の一つが、1曲目の『two part intention』であります。トレーシーがモンクならば、テナー・サックスのボビー・ウェリンズもラウズ色を出しているのは面白い。

 トレーシーより10歳若いウェリンズは、録音当時は31歳。12歳からサックスを始めたウェリンズは、1961年にマイケル・ブラウン,ピート・ブラウンと即興演奏のためのグループ『ザ・ニュー・デパーチャーズ』を結成しました。トレーシーとの共演も続けながら1960年代を活動し、1970年代前半の一時リタイアを挟んだ後には、長らく自分のグループを率いていた方です。ウェリンズの1961年録音の作品に、トレーシーが参加しております。もしもこの作品がCD化されることがあれば、非常に嬉しいのですがね。

 さてトレーシーに話しを戻しましょう。演奏のあっさり感が良いです。モンク色になっていながらも、トレーシーのセンスを感じる内容です。また、一部の曲でヴァイブやセレステを使っておりますが、ピアノ1本での演奏の方が、すっきりしただろうと感じました。