2005年7月26日掲載
Stan Tracey      Under Milk Wood
Columbia原盤    1965年5月録音

 イギリスを代表するピアニストの一人であるスタン・トレーシーは、1926年に生まれ、12歳からピアノを始めました。16歳からギグを開始し、1950年から翌年にかけてエディ・トンプソンのバンドにアコーディオンで参加しておりました。その後もディジー・リースやキャブ・キャロウエィなど様々なミュージュシャンと共演を重ね、モンクやエリントンの影響を取り入れたスタイルを築いていきました。

 1959年に開店したロニー・スコッツ・クラブでは、最初からハウス・ピアニストとなり、自己のトリオで出演しながら、様々なミュージュシャンの伴奏も行っておりました。その後もトリオにビッグ・バンドにと精力的に活動を続け、今日に至っております。

 今日取り上げる作品はロニー・スコッツ・クラブ時代のものですが、スタジオ録音であります。トレーシーのウェブ・ページには彼の詳細なディスコ・グラフィーが掲載されておりますが、このスタジオ盤の直前には、ウエス・モンゴメリーの伴奏者として、ロニー・スコッツ・クラブでライブ録音を行っております。

 さてこの「アンダー・ミルク・ウッド」なのですが、オリジナル盤とは大きくジャケットが変更になっています。理由として考えられるのは、1974年頃にトレーシーは自身でsteamというレーベルを設立しており、この「アンダー・ミルク・ウッド」をそこから再発しております。コロンビアから音源は買い取ったけど、ジャケットの権利は買い取れなかったということでしょうかね。

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 てっきりトリオだと思って聴き始めたら、サックスが入っている。裏ジャケを見れば、4人写っているし、表ジャケにも4人の名前があり、完全な僕の思い込みでした。Bobby Wellins(ts),Jeff Clyne(b),Jackie Dougan(d) が、参加メンバーです。

 さて内容ですが、モンクやエリントンの影響を取り入れたスタイルを築いていったという部分は、頷ける内容です。モンクの独特の語り口と、エリントンの「マネー・ジャングル」で聴けた荒々しいピアノが、随所に聴ける内容です。しかし根は優しいピアノ。そして、メンバーを上手く使って、バンドの存在感を示しています。その意味で、ビッグ・バンドで活躍しているという事実が、分かる内容です。実に味のある1枚です。