2001年9月7日掲載
Aaron Goldberg    >> unfolding
J Curve原盤     2000年2月録音

 さてさて、今回でその姿をはっきり見せてみろ、との思いです。

 アーロン・ゴールドバーグというピアニストは過去2回取り上げましたが、その個性をはっきり見出せない作品でした。普通ならとっくに付き合うのを止めるのですが、何故か引き付ける魅力のあるピアニストなのです。

 クァルテット作品トリオながらグループとしての作品と取り上げてきたのですが、今回のは混じりっ気なしのゴールドバーグがリーダーのピアノ・トリオ作品です。Reuben Rogers(b),Eric Harland(d)を従えて、自作を中心にコルトレーンやスティービー・ワンダーの曲を取り上げている、この作品。

 さぁ、ゴールドバーグに決着をつける時が来たぞ。

20010907

 1曲目の「sea shanty」を聴いた時、ゴールドバーグはブラッド・メルドーに影響されたなと、感じた。そこに無理を感じながら聴き進んだ2曲目の「isabella meets wally」が、ゴールドバーグの本来の姿ではと、感じました。美しさと寂しさを華麗でストレートなタッチで演奏されたバラードに、彼の素顔を見出した気分になりましたね。その意味では、コルトレーン作の「eauinox」でも、同様の内容でした。

 このもの哀しげなバラードをコルトレーンは、正式レコーディングに3回臨みました。最初が1959年12月のColtrane Jazz と Giant Steps 用の録音でしたが、「eauinox」はお蔵入り。この後何度もステージで取り上げて、次に臨んだのが1960年10月21日のColtrane Jazz と My Favorite Things 用のレコーディングでしたが、これまたお蔵入り。その五日後に行なわれたMy Favorite Things と Coltrane's Sound 用の録音の際に、ようやく納得いく「eauinox」の演奏が出来たのか、それがColtrane's Sound に収録されたのです。

 コルトレーンが納得いくまで数多くの演奏と時間を要したこの曲を、ゴールドバーグも今まで何度もトライしてきたのでしょう、ここでは前述した彼の素顔でストレートに好演しております。ようやく輪郭がハッキリしてきたこのピアニスト、これからの展開に期待したいですね。