コンコード・レーベルから既に6枚の作品を発表しているカーリン・アリソンさんの作品です。少年のような目が素敵な女性ですね。参加メンバーが、さすがコンコードだけあって凄い。James Williams(p), John Patitucci(b), Lewis Nash(d), Bob Berg(ts), James Carter(ts), Steve Wilson(ss)です。
この作品は収録曲に関しては、コルトレーンが1961年12月21日,1962年9月18日と11月13日に吹き込んだ不朽の名作「バラッズ」と、同一の8曲が並んでいます。さらにそれにプラスして3曲収録されているのですが、「naima」を取り上げているのは分かるよね。他にはコルトレーンが1958年にケニー・バレルとプレスティッジに吹き込んだジェローム・カーンの名曲「why was I born」、そして1960年10月26日に吹き込んだ「my favorite things」に収録されたコール・ポッターの名曲「everytime we say goodbye」が収められてます。
特に「everytime we say goodbye」に関してコルトレーンは、1961年のドルフィーとのツァーで、また1962年の黄金クァルテットでのツァーで何度も演奏しているものです。さて今回取り上げている作品でアリソンさんが何故コルトレーン尽くしにしたかはさて置き、変にコルトレーンのそれを意識したものにせずに、良いバラード集という内容になっていることを願います。先に記したバック・メンバーは、サックスに関しては曲ごとに3人が代わる代わる演奏しているのですが、何か狙いはあるのでしょうかね。
ここで何度も書いてきたことだが、ヴォーカリストの最大の資質は、声質だ。ハスキーで重厚で澄んでいて清楚で色気のある声なんだな。随分と矛盾した表現ですが、場面場面で様々なアプローチを、ごく自然にされているのです。
聴いている方は、時には絹の布を頭に舞い降りた気分になるし、時には間接照明が薄くショット・グラスに光りを注いでいるバーにいる気分になるし、時にはシャワーを浴びた後に二人で毛布にくるまっている気分になるという感じです。この雰囲気で名盤バラッズの8曲を歌っていただけるのですから、ありがたい気分で一杯になります。
各曲とも冒頭ではコルトレーンのそれを思い出すのですが、あっという間にアリソンさんの世界に引きずり込まれると共に、名盤バラッズの選曲及び配列は絶妙なものだったことを実感しますね。それとサックスは、あくまでアリソンの盛り立て役であり、コルトレーンしていないところが良かったですな。「you don't know what love is」のボブ・バーグ,「say it」のジェームス・カーター,「nancy」のスティーブ・ウイルソン、アリソンの雰囲気を活かすソロを聴かせてくれてます。
さて、追加の3曲ですが、「ネイマ」が圧巻。スキャットで臨んだアリソンですが、彼女の魅力が最大限に詰め込まれた熱唱です。ウイリアムスのピアノの張り詰め方と、カーターのテナーの爆発ぶりも最高でしたね。この曲で〆にすべきだったんだよね。残りの2曲が、他と比べればオマケ程度の出来で、残念でしたね。
コンコードというメジャー・レーベルに既に5枚も作品を残しているアリソンさんなのですが、今まで聴いていなかったことを無性に後悔すると同時に、ジャズの世界の奥の全く見えない深さを実感した1枚でした。