2021年12月1日掲載
The John Coltrane Quartet     Africa/Brass
impulse!原盤                           1961年6月録音

 ジョン・コルトレーンのインパルス!からの第一弾アルバムです。A(S)二桁番号に14枚の作品を残しているコルトレーンですが、本作はA(S)-6との規格番号で発売されました。

 A面は「Africa」が収録されています。この曲は5月23日と6月7日の二度のセッションで13回演奏され、記録にある限りでは最後まで演奏されたのは3テイクあります。このアルバムに収録されているのは、二日目に二度演奏された中の最後のものです。

 B面最初の曲は「Greensleeves」で、5月23日の前半で演奏されたテイクが収録されています。二曲目は「Blues Minor」です。この曲は6月7日の最後に演奏された本盤収録テイクだけが、記録にあります。

 曲ごとの解説と参加メンバーは、「今日のコルトレーン」をご参照下さい。本作品の特徴、コルトレーンのインパルス!での最初のセッション特徴を上げるとしたら、4つあります。

 先ずはオーケスストラでの演奏でしょう。コルトレーンのリーダー・セッションでは初のオーケストラでの収録であります。5月23日は18人、6月7日には15人での演奏となっており、これだけに人数での演奏はこのセッションだけであります。

 二つ目の特徴としては、ドルフィーとのスタジオでの共演であります。ライブでの二人の共演はジャズ界の名場面と言えますが、スタジオとなると本セッションと、本セッションの合間に行われたアトランティックでの「オレ」のセッションだけとなります。また本セッションのブラス・アンサンブルはドルフィーとタイナーがアレンジを行なっています。

 三つ目の特徴としては、クリード・テイラーが発売までプロデュースした作品は、本作品だけであることです。私の想像ですが、コルトレーンはクリード・テイラーの熱意に打たれてインパルス!と契約したと思っています。

 最後の特徴としては、再びルディ・ヴァンンゲルダー・スタジオで録音を行ったことです。コルトレーンがプレスティッジで行った24回のセッションは全てヴァンンゲルダー・スタジオで行われましたが、アトランティックでは録音技師はトム・ダウドでした。録音技術に優れているトム・ダウドとのレコーディングから、コルトレーンは再びジャズマンの心がわかるヴァンゲルダーとのスタジオ作業を行うようになったのです。

 余談ですがオーケストラ演奏でありながら、ジャケには「Quartet」とクレジットされているのは実に不思議であります。

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 アルバム全体を通して、そこに流れているオーケストラの響きが同じ色合いで流れているのが、素晴らしい点でしょう。このセッションだけのオーケストラで、ここまで練り上がっていることに感心します。

 この作品といえばA面全てを使っての「Africa」となりますが、B面の2曲も素敵な演奏です。そしてこの3曲を、その違いを生かしながら、統一感ある演奏になっています。

 このインパルス!第一弾のアルバムは、その後のコルトレーンの傑作や意欲作の数々の中で地味な位置付けとなっているのも事実でしょう。しかしながら、アルバムとしてのコンセプトがしっかりとありそれが演奏されていることと、この後のインパルス!での6年間のコルトレーンの活動を感じさせることを考え合わせれば、もっと注目浴びるべき作品だと私は思っています。

 各曲については「今日のコルトレーン」をご覧くださいい。