私にはこれまで縁がなかった本作品ですが、マイケル・ブレッカーが40歳台後半に制作し大ヒットしたアルバムとなり、1990年代の代表ジャズ作品との評価もネット上にあり、そして第39回グラミー賞を受賞した作品でもあります。脂が乗っていた頃のマイケルの作品であり、パット・メセニーやディジョネット、さらにはデイヴ・ホランド、そして曲によってはマッコイ・タイナーが参加しています。
アルバム名からすればジャケット写真は、ハドソン川沿いなのでしょう。そこはニューヨーク市の中心部からは離れた、自然が残る後継です。内ジャケットには田舎町の船着場でスーツ姿でフェリーを待つ人たち、そしてNYの中心へ川を進む写真が掲載されています。
香港には欧米人が多数住んでおり、その勤務先の多くは香港島の中心にある金融街です。その周辺の高い家賃のアパートメントに住む方々も多いのですが、フェリーで20分ほどの島々に住んでいる方も多いとの話ですし、朝の通勤風景も目にしました。その理由としては、緑に囲まれた所に住んでいたいとのものです。
このマイケルのジャケットにある光景も、住む環境は自然豊かなところを望む姿なのでしょう。
香港で、そしてマレーシアで、私は通勤時間帯にフェリーに乗る機会が多くありました。多くの人種の方々が乗っているフェリーですが、そこから見える光景には、それぞれの方がそれぞれの思いを抱いていたと思います。
このマイケルの作品を聴いていますと、フェリーに乗っていて、同じ光景でも人によって感じることが違う場面や、僅かな時間の航行なのに景色が変わっていく様子などを表現しているのかと感じました。
メセニー作の「Song for Bilbao」でのギターとサックスのスリリングな演奏には、故郷のスペインでのネルビオン川を通勤で使っていた方の、かつての良き時代のビルバオを思う姿があるようです。
マイケル作の「African Skies」ではベースとドラムスが繰り広げるリズムの動きの中で、サックスとマッコイのピアノが色濃く迫っていくテンポの速い演奏には、フェリー乗車時間の中でも急変していく空模様に何かを感じ入っている方の姿を感じます。
同じくマイケル作の「Cabin Fever」ではマイケルの突っ走るテナーを堪能できます。曲名からすれば同乗している方々との関わり具合の表現かなとも思いますが、演奏を聴くと操縦席で他のフェリーの往航をかわしながら、当局から怒られることなど構いもせずブッ飛ばす操縦士の熱気を感じます。
ここまで妄想感想を書いてきましたが、そんなことを思ってしまうマイケルと参加メンバーの勢いを感じる作品でした。