2020年6月3日掲載
Kenny Burrell & John Coltrane
New Jazz原盤      1958年3月録音

 ケニー・バレルの代表作を挙げろと言われて、本作品をあげる方は少ないことでしょう。またコルトレーンについても、プレスティッジ系との縛りを付けた場合でも、上位5作品に本作品を入れる方は少ないことでしょう。

 でも、本作品は両者のファンに愛されている作品です。急激な上昇気流の中のコルトレーンと、まさにこれから注目されていくギタリストのケニー・バレル、プロデュースしたボブ・ワインストックの狙いは何であれ、この時期の二人の共演作品が残っていることは貴重だと思います。

 トミフラ、チェンバース、そしてジミー・コブとの演奏です。

20200603

 この録音時点ではコルトレーンの気持ちは、1年後のプレスティッジとの契約終了、そして新しいレーベルでの自分が望む形でのレコーディングに向かっていたのであろうと、本作を聴きながらふと思いました。

 ギターとの共演で新たな道を模索するとかの真摯な思いではなく、レーベルが用意したセッションを、悪い言い方ではこなしていく、良い言い方をすれば楽しんで行こうとの思いが、コルトレーンにあったと思います。

 ただしそこは真面目なコルトレーン、手抜きは一切なく、新進気鋭のギタリストと共に、新進気鋭を卒業したコルトレーンが楽しんでいる演奏です。

 バラッドをデュオで演奏している「Why Was I Born ?」が注目される作品ですが、クインテットでの演奏に飛び抜けるものが欲しかったと思いながらも、このような楽しいコルトレーンの姿にニヤッとしながら聴き終えました。

 コルトレーンの話ばかり書きましたが、バレルにとっても本作はキャリアのステップ・アップとは言えないものでしょうが、テナー・サックス奏者との共演という意味では良い経験になったのかと思います。テナー奏者とのバレルの共演作品、そんな目でバレルの諸作を聴いてみたくなりました。

 この時点のバレルとコルトレーンの共演を、楽しめる1枚です。