今年の中旬の二ヶ月間にイスラエル出身ジャズマンの作品を50枚弱購入しましたが、新譜に近い作品以外は中古での購入となりました。その中に一作品だけ日本プレスのものがあり、それは今日取り上げる作品です。
ややこしい言い方になりますが、ベース奏者のアヴィシャイ・コーエンがピアノを演奏している作品であり、イスラエル三人、そしてアルゼンチン、キューバ、メキシコから各一人、四カ国六人からなるバンドの最初の作品になります。
さて国内盤CDには、小川隆夫さんによる解説が封入されており、氏が行ったアヴィシャイへのインタビューがあり、そこにピアノ演奏作品を作った経緯がありますの、紹介します。
「2000年1月のことだった。ビザの書き換えでぼくはエルサレムに帰っていた。けれどちょっとした問題があって、ビザが発給されるまで2ヶ月間待たされることになったんだ。それでポッカリ時間が空いたんで、前々から考えていたことを実行に移そうと思いついたのさ。ピアニストとして演奏することをね。それで友人だったベース奏者のヤジル・バラスとドラムスのダン・アランを誘って、西エルサレムの小さなクラブで演奏を始めた」
またインタビューでは、次のこともアヴィシャイは述べています。
「同時に気がついたのが、ベーシストとしてバンドを率いるのとピアニストとしてバンドを率いるのとではまったく違うということだった。どっちがいいって言うんじゃなくて、音楽に対する見方がそれぞれで違っているんだ。ベーシストの場合は、サウンド全体のバランスをまず考えてしまう。ピアニストでいるときは、音楽の方向性がとても気になる。自分が音楽やグループを引っ張っていかなくては、という気持ちがピアノを弾いていると強くなるみたいだ」
Antonio Sánchez(d, vo), Diego Urcola(tp), Yosvany Terry(as, ts), Avi Lebovich(tb, vo), そして Yagil Baras(b) との演奏です。
ピアノで自己主張の場面もありますが、やはりインタビューでアヴィシャイが述べている通りに、音楽の流れに精力を傾けているアヴィシャイです。その流れは清涼感あるものですが、そこに加える味わいは幅広いもので、音楽内容としてはインターナショナルというよりユニバーサル、とのアヴィシャイの発言にうなづけるものです。
さて私はこのバンド名の「Vamp」の意味を考えておりました。「メロディの導入部分もしくは間奏部分で演奏される、リズム・パターンのみの演奏のこと」「短いコードの繰り返しなどによる伴奏パターン」との意味が、音楽用語のヴァンプにはあります。そして他にもこの言葉には「(男を)誘惑する」との意味があります。「音楽に、ジャズに誘惑された男たちのバンド」、このアルバムの内容からはこの意味かなと感じながら、国内盤限定ボーナストラック2曲も楽しみながら、この作品を聴き終えました。