トランペット奏者のアヴィシャイ・コーエン、ベース奏者のオマー・アヴィタルなどからなるサード・ワールド・ラヴの第四作目を、今日は取り上げます。
収録曲はアヴィシャイ・コーエンとオマー・アヴィタルのそれぞれが作った曲が中心ですが、「テルアビブのあらまし」とでも訳すタイトル曲は、ピアノ奏者の Yonatan Avishai 作のものです。そこでWikipediaから彼の情報を少しばかり紹介します。
1977年にテルアビブで生まれたヨナタンは、幼い頃からピアノのレッスンを受けていたそうです。また日本に住んでいいたこともあるようです。テルアビブでミュージシャン仲間と演奏を続けていた彼は、2002年にフランスのドルドーニュに渡り音楽活動を続け、またこの年に結成されたサード・ワールド・ラヴに参加しました。このバンドでの活動で世界を渡り、ヨナタンもジャズ界で知られる存在になりました。その後はトランペット奏者のアヴィシャイ・コーエンのバンドで演奏したり、また演劇における音楽にも活動を広げていき、現在に至っています。
そんなヨナタンがメンバーのサード・ワールド・ラヴの第四作を、今日は聴いてみます。
ヨナタン作のタイトル曲は、タンゴ調のテーマをベースに、街の揺らぎを表現した演奏になっています。ベースの力強さ、エフェクト多めのトランペットが、テルアビブでの生活の揺れ動きを、決して過剰なものとしないで演奏しきっているのがお見事でした。そしてその流れには常にヨナタンさんの凛としたピアノが流れていました。ヨナタンさんの演劇との関わりが、なんとなく感じられるものでした。
他の曲はよりドラマチックな演奏となっていますが、その中で「Hareshut」は「traditional Jewish-Yemenite」とクレジットされています。イエメンのユダヤ人に伝わる曲とのことですが、激動の歴史のイエメン、そこに暮らしていたユダヤ人は1950年頃のイスラエルへの移送など歴史に翻弄されてきました。そんな中で多くの悲しみに出会いながらも、力強く明日を見つめる人々の姿が、この曲での演奏に込められています。オマー・アヴィタルのオードが全体を包み、各メンバーが色を添え、ヨナタンの歌も響いています。
イスラエル・ジャズマンのジャズが、この作品が登場した2006年に市民権を得たのかなと、遅れてきたイスラエル・ジャズ好きの私は思った作品です。