ベース奏者のアヴィシャイ・コーエンの作品です。コーエン三兄妹のトランペット奏者とは、同姓同名です。そしてこのお二人は著名なジャズマンなのです。イスラエル出身というよりも、ここ暫くのNYのジャズ界を代表するベース奏者とトランペット奏者なのです。
SNSの知人がイスラエルのジャズを紹介してくれた際には、この二人を混同しないように気を使ってくれてましたが、それでも私は混乱していました。そしてディスクユニオンのサイトを読んでみても、2015年の時点でも、イスラエルのジャズを追っかけてきた方の中にも、この二人への混乱があったようです。
ベース奏者のアヴィシャイ・コーエンについて、Wikipediaから引用して紹介します。
1970年にイスラエルの北部、レバノンに近いところにあるKabriで生まれた彼は、すぐにエルサレム近くに移り、音楽一家の中で育ちました。6歳あたりで西部のShoevaに移り、9歳の時にピアノを弾き始め、14歳の時にジャコ・パストリアスに触発されベースを演奏し始めました。
1993年頃までにはNYに移ったようで、チック・コリアのもとで活動をし、初めて発表したリーダー作品が本作品になります。その後は継続的にリーダー作を発表し、今に至るまで17作品を発表しています。
本作品にはSteve Wilson(ss), Steve Davis(tb), Jeff Ballard(d), Jason Lindner(p), Amos Hoffman(g)というメンバーに加え、Chick Corea(p), Brad Mehldau(p), Danilo Pérez(p), Jorge Rossy(d), Don Alias(conga), Claudia Acuña(vo)がゲストで加わっています。
初リーダー作にかけるアヴィシャイの意気込みを感じる、聴き所満載の作品になっています。12曲中11曲が彼のオリジナルで、メロディ・メーカーとしての彼に惚れます。各曲でメンバーの選抜に工夫を凝らし、そこにアレンジの妙を加えています。そして彼のベース奏者としての実力の高さ、これらが揃っていますから、素敵な作品になるのは当然のことでしょう。
3曲目に「Bass Suite #1」、9曲目に「Bass Suite #1」が収録されています。このアルバムの中では箸休めのような存在なのですが、ここにアヴィシャイさんの実力、先に述べたことを感じました。自分のベースにホーンを二つ、「Bass Suite #1」ではそこにパーカッションを加えての演奏です。似たようなメロディですが違うもの、これにホーン2本をセンス良く絡め、自分のベース演奏を軸に演奏しています。ベースを中心に聴くのもよし、ホーンの流れでメロディの切なさを感じていくのも良し、そんな感じでした。
更にはこの二曲の前に収録している「Madrid」と「Adama」、ここでのジューイッシュ音楽(或いはクレズマー、もしくはハシディック)の色香具合に酔ってしまいました。
他にもメルドーとの「Besame Mucho」、チックのローズが鳴る「Gadu」など、聴く時々で感心が移っていく内容です。