コルトレーンのアトランティックからの第三弾は、人気曲「マイ・フェイヴァリット・シングス」をアルバム名にして、規格番号1361で1961年3月に発売されました。
コルトレーンのアトランティックといえば、本作品と「ジャイアント・ステップス」の二枚が、人気作品となります。ただし「ジャイアント・ステップス」はアルバムの総合評価での人気なのですが、本作品はタイトル曲だけが語られる作品のような気がします。
1960年10月終盤の三日間(21,24,26日)に、マッコイ・タイナーとエルヴィン・ジョーンズ、そしてベースにスティーヴ・デイヴィスという、黄金カルテット一歩手前のメンバーで、本作品に収録されている四曲が録音されました。
本作の中でタイトル曲の次に語られるのは、「サマータイム」でしょう。A面の冒頭にタイトル曲、B面の頭に「サマータイム」、それぞれ印象深い演奏を用意しています。そして各面ともに二曲目には、気軽に聴ける演奏を用意しています。このアルバム構成の見事さが、本作の良さの一つでしょう。各曲については「今日のコルトレーン 」をお読みください。
さてタイトル曲ですが、「今日のコルトレーン 」には書かなかったことを一つ触れておきます。このアルバム発売と同時に、シングル盤、EP盤(45-5012)で「マイ・フェイヴァリット・シングス」が発売されました。14分弱の演奏のオリジナルに対して、シングルではA面に2分42秒、B面に3分2秒を収録しています。つまりは思いっきり切ってのシングル発売なのです。
どのように収録したのか知りたくネットで調べましたが、なかなか情報が得られませんでした。そこでジャズ盤専門店を50年近く営業しているお方にお聞きしました。なんと単純にぶつ切りした収録とのことです。そしてそのシングル盤は、その店主さんは恐らくは一回しか出会ったことがないそうです。それも数年前に国内で有名なコルトレーン蒐集家が、そのオリジナル盤の数々を手放した時とのことです。
私には生涯出会えない「ぶつ切り」なのかと思いながら、それでも店主さんに、「万が一入荷したら、よろしくね」と伝えて、電話を切りました。
アルバム構成の良さ、そして「ぶつ切り」も聴きたくなるタイトル曲、愛すべきアルバムです。