ディスクユニオン関内店中古CD半額セールで、150円で購入した作品です。
ピアニストのエリック・ワトソンについては、「今日の1枚」で1992年録音の作品を取り上げたことがあります。その際にはエリックについては情報なし、そして1992年作品については「個性が弱い」との感想を書きました。
それから20年経ち、ネット上の情報は比較にならない膨大なものとなり、エリックさんの情報もウィキペディアで確認できるようになっています。
彼は1955年にアメリカのマサチューセッツ州で生まれ、オハイオ州のオバーリン音楽院を卒業し、パリに移住し、パリを拠点に今に至るまで活動しています。あくまでウィキペディアでの情報ですが、リーダー作も1980年からコンスタントに発売していますが、2010年以降はリーダー作を出していないようです。「あくまで」と念を押したのは、「今日の1枚」で20年前に取り上げた1992年作品がウィキペディアには掲載されていないからです。
南仏のマルセイユから北に100kmほどの街カルパントラの郊外にあるStudio la Buissonneで、トリオで吹き込まれた作品です。
グーグル・マップでカルパントラを見ますと、鉄道の形跡らしきものが確認できます。古代時代においてはギリシャ商人たちの商業拠点だったカルパントラですので、交通物流網は先端のものがあったのでしょう。今は高速道路網がその機能を果たしているこの街で、エリックは人々が列車の中で、口には出さないがいろんな気持ちでいたことを感じたのではと、演奏を聴いて思いました。何枚もの絵を描くように、本作ではピアノで押し黙っているが様々なことを考えている人々の姿を思い浮かばせる演奏を、エリックは聴かせてくれます。
1時間近くの演奏時間の中でそんな瞬間が数度あり、聴く側がそれを感じたならば、エリックの狙いは当たったのでしょう。