2019年8月3日掲載
Art Taylor              Taylor's Wailers
Prestige原盤           1957年2月録音

 ジャズ黄金期の名物ドラマーであるアート・テイラーは、その忙しさのピークであった1956年秋から1957年春までの半年間だけ、自身のバンドを組んでいました。その名は本アルバム名であるテイラーズ・ウェイラーズでした。その活動の最終盤である1957年2月25日に吹き込まれたのが、本作本であります。

 ドナルド・バード(tp),マクリーン(as),そしてラウズ(ts)というフロント陣、そこにレイ・ブライアント(p)とウェンデル・マーシャル(b)を加えてのシクステットでの演奏です。

 話がこれで終わりならば分かりやすい作品なのですが、そこに同年3月22日のセッションから1曲「C.T.A.」を本作に加えました。この3月22日のセッションがガーランドがリーダーのセッションでしたので、何故だろうとの思いです。「C.T.A.」を収録しなければ演奏時間は36分、何かないかと考えて、Prestigeはこれを打ち込んだなのでしょう。

 とにかく、この世に1枚しかないテイラーズ・ウェイラーズの作品を今日は楽しみます。

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 フロントの三人の演奏とその音色が気持ち良く融合している内容です。特にサックスの2本、ラウズとマクリーンは、互いを「きょうでぇ(兄弟)」と呼び合っていると感じる、この二人ならではの演奏になっています。大雑把ながら人を惹きつける兄貴、ツッコミが鋭いが人に頼られる舎弟、個性が上手くぶつかっています。

 それをまとめるテイラーも、リーダー作ならでのドラムが目立つ演奏ですが、あくまでバンドとしてまとまる程のもので、爽快感が残る演奏です。

 レイ・ブライアントがもっと光っていれば言うことなしですが、さらにはスローでも痺れさせてくれたらとも思いますが、兎に角テイラーズ・ウェイラーズというバンドの色に感じ入る作品です。

 そうするとどうしても「C.T.A.」へのコメントとなります。この演奏がどうだとではなく、全体の色合いの中で明らかに浮いてしまうものです。テイラーズ・ウェイラーズの演奏だけで構成して欲しかった、そんな思いです。