ここ数年、と言うより10年以上、私は新譜買いから遠のいております。今日の主役のサックス奏者カマシ・ワシントンは、その間に登場した方で、話題を集めた方とのことです。2011年12月から本作品の録音が始まり、それが終了したのは2014年3月とのことです。それがCD3枚組で発売されたのは2015年3月のこと、すぐに高い評価を集めたとのことです。
そんな世間の評価を知らずに過ごしてきた私が、カマシの存在、そして本作の存在を知ったのは、今年の4月にネット仲間に教えて頂いたからです。すぐにネット注文したのですが、今日までなかなか取り上げられずにいました。
テナー・サックス奏者のカシマの本作品には、数多くのミュージシャンが参加しています。大人数での大作のタイトルは、「ザ・エピック」です。エピックはもともと叙情詩との意味とのことです。では叙情詩とは何かというと、ウィキペディアでは「詩人個人の主観的な感情や思想を表現し、自らの内面的な世界を読者に伝える詩」とのことです。またあるサイトでは「叙情詩は長い物語的な詩で、 国の誕生の話をよくします」と書かれています。因みにそのサイトではエピックは最近はスラングとして用いられ、それは「素晴らしい」や「最高」に近い意味とのことです。叙情詩と言われてピンとこない自分が恥ずかしいのですが、ジャケを見ると「人類の誕生のお話」との意味に、私は解釈しました。
1枚目は計6曲で66分の演奏時間、ここでのタイトルは「The Plan」です。このタイトルを頭にして演奏を聴いていると、長い航海に出発するに当たって夢を語り、しかし考えられる怖さに震えながら、それでも大海に出て行くことを穏やかに感じているような、そんな気持ちで航海計画を立てているような絵が思い浮かびました。
2枚目は計6曲で54分の演奏時間、ここでのタイトルは「The Glorious Tale」です。聴いて感じたのは、「栄光の物語」と言うよりも「栄光への苦労」と言うものでした。喜びもあれば落胆もあり、信じ合える力強さもあれば裏切りの悲しさもあり、そちらかと言えば後者の負の面を強く感じました。
3枚目は5曲で53分、ここでのタイトルは「The Historic Repetition」です。「繰り返す歴史」と言うよりも、「また出来る事の喜び」と言うように感じました。前2枚で出てきたメロディも用いて、なんだかんだ言ってもまた前に進める嬉しさを感じた演奏でした。航海に例えるならば、長き航海が終わり、達成感を感じながらそこまでへの苦難も握りしめて、もう陸で暮らそう決心して暫く過ごしたけれど、やはり再び大海原に出て行き充実感を味わう決心した人間の笑顔が浮かんで来る演奏です。
173分のこの作品、物語を感じさせてくれる作品ですし、演奏時間の長さも苦になるものではありませんでした。カマシの豊富な音楽感がこのような作品を作り上げたのでしょう。私は感じただけで、この作品を理解したとは言えません。しかし、このように感じさせて来るれミュージシャンは貴重なものです。
新作を今年に発表し、好評だとか。いつかその新作を「今日の1枚」で取り上げます。