2018年8月10日掲載
Gene Russell             Talk To My Lady
Black Jazz原盤           1973年録音

 P-VINEという日本のレコード会社には、10代の頃にお世話になっていました。ブルースやレゲエの渋い作品を日本で発売していましたし、私はそれらの作品をニューミュージックマガジンを通して情報を得て購入していました。そんな時からジャズを聴くようになって、確か数枚のCDをこのレーベルから購入しましたが、その際にはP-VINEとは意識せずに購入していました。今から8年前にこのブラック・ジャズ箱を購入した時には、P-VINEという名前をしっかりと意識しての購入でしたし、あまり利益になりそうにない作品を手がけているのに何十年も活動しているのは立派なものだと、感心した記憶があります。

 BJQD/10として発売された第10弾は、ジーン・ラッセルのブラック・ジャズからの2作目です。例の小冊子から本作を紹介します。

 ピアニスト、ジーン・ラッセルのブラック・ジャズ2枚目。スピリチュアルだけがブラック・ジャズじゃない、とでも言わんばかりにさらにファンキィな色合いを深めた今作品、冒頭の「Talk To My Lady」他、ボッサ風味にアレンジされた「You Are The Sunshine Of My Life」やベースがミラクルな離れ技を披露する「My Favorite Things」ではフェンダー・ローズが大活躍。白眉はジャズ・ファンク「Get Down」。地を這うようなベース・ラインとファンキィすぎるワウ・ギター、そしてコンガも加わっての最高にドープなファンク・ビートに乗るラッセルのピアノはすがすがしく、喜びに満ち溢れているのだ。

 奥さんらしき人との2ショット・ジャケが印象的な本作品を聴いてみます。

20180810

 スティーヴィー・ワンダーのヒット曲である「You Are The Sunshine Of My Life」は、数多くの方々にカヴァーされました。ウィキペディアで確認しただけでも、ライザ・ミネリ、シナトラ、ペリー・コモ、メル・トーメなどの大御所が、この曲を取り上げています。

 知る人ぞ知る存在のジーン・ラッセルの演奏は、希望満ち溢れる心地よさを、エレピのシングルトーンで聴く人に届けています。黒人音楽の一つの要素は、この希望満ち溢れる気持ちかなと、思った次第です。

「My Favorite Things」と聞いて、映画「サウンド・オブ・ミュージック」を思い浮かべる方も多いことでしょう。しかしジャズファンならば、よっぽどのへそ曲がりでない限り、コルトレーンを反射的に思い浮かべます。コルトレーンで耳タコのこの曲を、ベースのヘンリー・フランクリンの活躍で、この作品では演奏し始めます。やはりそう来るのかと思いながら聴いていると、ベース対エレピでの軽快なドライブの様相であり、これはこれで楽しめるものであり、このドライブ感も黒人音楽の重要なことだと感じました。

 ラッセルのピアノと語りで披露されている「If You Could See Me Now」を聴きながら、きっと意味深なことを語っているのであろうなと思いながら、本作を聴き終えました。