副題に「オーネット・コールマンの音楽」と付けられている、ジョン・ゾーンの作品です。ジョンはこの1988年から5年間ほどネイキッド・シティというユニットを結成し、様々な音楽要素を取り入れた演奏活動を行っていました。ウィキペディアによれば本作は「ハードコアパンクの観点から、特にスラッシュコアとグラインドコアの現代的なイノベーションに注目して、フリージャズに近づけた作品」と、解説しています。私はパンクロックを時代体験した世代ですが、この解説にある「スラッシュコアとグラインドコアの現代的なイノベーション」との1988年は全く知りませんので、これを読んで何と無く想像できる程度のものです。
イギリスの出版社から2005年に出された「あなたが死ぬ前に聴いておくべき1001アルバム」に、本作は選ばれているそうです。
クインテットでの演奏で、アルト奏者がジョンとティム・バーンの二人です。右チャンネルからジョン、左からティムの演奏が流れるようになっており、オーネットの1950年代から1980年代の17曲が演奏されています。
1989年に輸入新譜CDとして購入しましたが、数回聴いただけでCD収納ケース入りとなった作品です。
最後にですが、この時期にこのアルバム名で来日ライブをしていた微かな記憶があります。
重要な要素であるドラムとベースがロックそのものであり、そこに両アルトが鬼気迫る演奏をしている内容です。どの曲もオーネット節が強いものですが、どの演奏もオーネットの世界をぶち壊そうとしているかのものです。
オーネットはこの時期も精力的に活動しており、「Virgin Beauty」というファンク調の要素が強い作品を残しています。オーネットも次の音楽を目指していた訳ですが、「デビューしたてのオーネットなら、今ならばこんな演奏をするでしょ」との思いがジョンにあったのではと感じました。
30年前の私は「ジャズではないでしょ」と感じて本作を収納ケースに入れたのでしょうけれど、30年経った今はこの演奏の激しい流れに心地よく身を沈められました。