2018年4月5日掲載
Tim Ries                           Stones World
Wal Wal Music原盤    2008年録音

 ティム・リーズはアメリカのサックス奏者であり、様々な分野で活躍しており、大学や音楽学校での指導も行っている方です。そして私にとってのティム・リーズと言えば、愛して止まないストーンズのツアーでサックスを吹いているお方です。

 そんな彼のストーンズ集は「The Rolling Stones Project」というタイトルで2005年に発売されました。今日取り上げるのはその第2弾であります。ストーンズのワールド・ツァーで世界各地を巡っている中で、プエルトリコ,パリ,インド等で録音したものであり、東京での録音もあります。現地のミュージシャンを加えての一発録りを基本にして吹き込まれました。ストーンズのメンバーも参加しています。

 CD2枚組13曲が収録されています。私が持っているのは日本先行発売のもので、東京録音の2曲の別テイクが追加されています。

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 ストーンズのお馴染みの曲を、録音地の環境毎に素敵なセッションを繰り広げている作品です。ここでは東京でのセッションについて、少しばかりコメント致します。

 東京セッション実現には、二人の日本人が大きく関わっていたとのことです。一人目はリースがEighty Eightと呼んでいる伊藤八十八氏です。伊藤氏がリースから依頼を受けて12時間でこのセッションの環境を整えたとのことです。もう一人は吉田美奈子さんです。彼女が中心となって日本側ミュージシャンを集めたとのことです。

 そんな環境で吹き込まれた1曲目はヴードゥー・ラウンジに収録されているスロー・ナンバー「ベイビー・ブレイク・イット・ダウン」です。ストーンズのステージでも良く取り上げられ、キースの歌声に酔うきょくです。このセッションでの参加ミュージシャンは、Tal Bergman(d), Bernard Fowler(lead Vo), Larry Goldings(org), Austin Peralta(rhodes)であります。そして日本人参加者は、Kenji Hino(b), Kiyohiko Semba(per), Kazumi Watanabe(g),Minako Yoshida(vo)であります。リースの艶っぽいテナーサックスが気だるい雰囲気の曲を素敵に盛り上げています。またこの曲を知り尽くしているバナードと彼の友人である吉田美奈子が、リースのサックス同様にぞくっとする歌を聴かせてくれてます。またベースの日野賢二の存在もここでは重要になっています。そして何よりもこの曲を素敵なものにしているのが、後日のオーバーダブで参加したキースのギターでしょう。東京で録音された演奏を聴いて、それにピッタリくる出だしをリースのサックスと絡みながら披露しています。

 東京2曲目は、リースが作曲した「ア・ファンキー・ナンバー」です。参加者は、Tal Bergman(d), Larry Goldings(org), Austin Peralta(rhodes)であります。そして日本人参加者は、Terumasa Hino(tp), Kenji Hino(b), Kiyohiko Semba(per), Kazumi Watanabe(g)であります。また同様にキースもオーバーダブで加わっております。ミドルテンポのブルースの世界で、リースのテナーと日野皓正のペットが絶妙な掛け合いを聴かせてくれています。

 他の録音地での演奏も聴き所満載ですが、ここでは書き切れません。ジャズファンに勧める作品とは言えませんが、ストーンズの洗礼を強烈に受けたジャズファンならば聴くべき作品と言えます。