レスター・ボウイのAECでの活動と並んで重要なのは、このブラス・ファンタジーでの活動であります。1980年代前半のヨーロッパのあるジャズ祭での企画から発展してできたのがこのブラス・ファンタジーと言われてますが、ブラスとドラムだけのバンドいうのは、1970年代からレスターの頭の中にあったと思います。それは1970年代にレスターが何作も吹き込んだソロ作品から、そんなことが伺えます。
先月ここで紹介したAECの1987年録音作品に、黒人の巨星の曲を取り上げたものがありました。今日取り上げるブラス・ファンタジー4作目は、その流れを取り入れたものです。取り上げたミュージシャンは、R&B側からジェイムス・ブラウン,シャーディー,ボビー・マクファーソン,そしてマーカス・ミラー、ジャズ側からはビリー・ホリデイとカークです。
ジャズ側の演奏での情念深掘りのアンサンブルは、お見事の一言です。カークの「溢れ出る涙」も素敵ですが、圧巻はホリディの「奇妙な果実」でありました。一方のR&B側では明るい曲を並べてあり、その曲調に沿ったアンサンブルを聴かせてくれ、それは楽しめるものです。その中でのボウイのソロでは憂いを感じさせるもので、ジャズ側での情念深掘りと一体感のある演奏と感じました。この作品は、上っ面を聞くだけでも十分楽しめ、深く聞けばさらに違う世界が広がる内容であります。