スイスのアールブルクという街の、ムーンウォーカーというクラブでのブラス・ファンタジーのライブ作品を、今日は紹介します。このクラブの写真をネットで見たのですが、外観は裏街の建物そのままであり、中身はキラキラ照明の300人ほどの演奏会場です。映画でよく見るような若者向けの施設との印象ですが、この作品の演奏が行われた25年前はどんな感じだっtのでしょうかね。
次にジャケットを見ると、とんでもない炎に包まれている商店の写真が掲載されています。このCDにある解説では、このライブの前日にLAで起きた暴動の様子とのことです。日本でも連日報道されたロサンゼルス暴動のことです。いくつもの人種問題が、この日に一気に爆発し、約1週間、死者53人、負傷者約2,000人を出し、放火件数は3,600件、崩壊した建物は1,100件という被害になりました。ジャケットにある炎の商店の一つの看板には、「Lara’s Toys & Gift」と書かれています。焼かれたからにはここは白人地区だったのでしょうが、このお店もとんでもない被害者であります。今でもこのお店が存在しているのかネットで調べたところ、CAのモントローズという街に、同名店があります。焼かれたお店とは場所は違うようですが、同じ店が今でも続いているならば、それは何よりであります。
さてブラス・ファンタジーのこのライブに話を戻しますが、曲名を見ると、前日の暴動報道を受けて演奏曲を変えたように思いました。
ホーンとパーカッションだけでのブラス・ファンタジーの、アンサンブルとスピード感の魅力が、スタジオ盤よりストレートに表現されている1枚です。スタンディングの観衆を前にして、バンド自体が燃え上がっていく様子がはっきりと分かり、ブラス・ファンタジーを代表する1枚と言えるでしょう。その中にあって、かつてスタジオ盤で取り上げていたホリディの「奇妙な果実」は、全体の中で得意な雰囲気を発しています。LAでの暴動に至った人種差別、その怒りが鎮まってくれと願っているような演奏です。途中で銃声を思わす効果音を入れていることには、聴くだけだとその位置が伺えません。しかしながら会場では、何らかの視覚面での演出があったのでしょう。この曲の演奏終了後の拍手から、スイスのアールブルクという街でこのライブに接した方々の感動が伝わってきます。