2006年8月19日掲載
Horace Tapscott      In New York
Interplay原盤          1979年1月録音

 ピアノ奏者であり、作曲・編曲の才もあるホレス・タプスコットと言えば、このコーナーで最近続けて取上げたソニー・クリスの作品で、このタプスコットに関して触れました。ここでタプスコットの経歴について、触れてみましょう。

 1934年にヒューストンに生まれたタプスコットは、5,6歳で母親からピアノを習い、次にトロンボーンを吹き始めました。プロ活動はトロンボーン奏者としてスタートしました。1950年代末にオーケストラを結成し、その後のパン・アフリカン・オーケストラの活動に繋がっております。今日取上げる作品が録音された時期頃からは、ピアニストとしての活動が主になっているようです。

 さて僕のタプスコットの印象は、クリスが取上げた曲からのもので、それはドラマチックなメロディを書かれる方との印象です。一方で前衛的な方とタプスコット評する向きもあります。兎に角、初めて聴くタプスコットの作品。アート・デイビス(b),ロイ・ヘインズ(d)との録音、ピアノ・トリオでの演奏です。

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 1曲目は、タプスコット作の『akirfa』。クリスの作品に収録されていた曲よりも、ドラマチック性は若干薄れておりますが、単調の哀愁のあるメロディ。それをタプスコットは、タッチの強い演奏、さらにはタッチの荒い演奏で、心の叫びを表現しております。都会の孤独が感じられる演奏です。もともとは流暢な演奏をする方なのかと感じますが、ここでは攻撃的なピアノです。この辺りが、前衛的なピアノと言われる部分なのでしょうか。

 他の3曲では、3人の演奏のぶつかり合いが聴ける演奏ですが、中途半端な感じがあります。どの曲も10分ほどの演奏時間ですが、1曲目以外は半分ほどの演奏時間にし、収録曲にバラエティを持たせて欲しかった。そうなれば、かなり評価の高い作品になったのでは。