マイルスが1954年末にニュー・クィンテットを結成する時に、真っ先にロリンズに声をかけました。しかしこの時期のロリンズは迷いのために雲隠れ状態。マイルスの参加を断ったロリンズは、やがて自分の迷いは消えていきました。その時にロリンズの目の前に、ブラウン~ローチ・クィンテットが現れたのです。この時期のジャズ界の話題を集めていたこのクィンテットに、やがてロリンズは加わるようになったのです。1955年11月のことでしたが、1956年6月26日のブラウンの死まで、その活動は続いておりました。この期間に録音されたのは2作品。エマーシーから発売された1956年2月録音の「ベイズン・ストリート」。そして本作品であります。プレスティッジから本作品は発売されたのでロリンズ名義ですが、その内容はブラウン~ローチ・クィンテットの演奏なのです。
僕は1986年に3200円で、このCDを購入しました。そこで解説を書いている青木和富さんの文章から、抜粋したものを紹介致しました。
やはりロリンズが契約しているレーベルへの録音だけあって、「ベイズン・ストリート」よりもロリンズ色が全体を強く支配しております。華麗で紳士的なブラウニーと比べると、ごっつくて気さくなあんちゃんというようなロリンズの対比が面白い感じです。やはり1曲目のロリンズ作の『valse hot』が白眉でしょう。この二人の対比の妙が、最も効果的に発揮されています。この曲はローチのお気に入りのようで、ブラウニーの死後も、ロリンズが加わったローチのバンドで2度(1956年と1957年)録音されております。