カーリング・クローグさんの作品は、このコーナーで3枚取り上げてきましたが、どれも1970年代のものであります。今日取上げる作品は1964年、彼女が27歳の時に吹き込んだ、事実上のデビュー作品になります。記憶によれば、CD時代になって一度発売されたはずですが、何故だかその時は購入いたしませんでした。時を経て、今年の初めの再発で購入したものです。ピアノ・トリオをバックにして、有名曲を中心に9曲歌っております。
クローグさんは、デビュー30周年の1994年に、彼女自身が選曲して2枚組みベスト・アルバムを発表しております。そしてその中に、このデビュー作品から2曲が収録されております。それは冒頭に収録されている、『by myself』と『lover man』です。ここでのクロッグさんは、1970年代の作品で聴けるような実験的要素は伺えず、素直に歌っています。癖のある声ですが、素直に歌うと、可愛らしい声に感じます。しかしながら、感情の強い込め方は、この時からしっかりと感じられます。特に『lover man』での、控えめな言い回しの中に恋心の執念が宿っている雰囲気は、彼女だけの世界と言えます。他にも良い曲があり、かつその中には、後年の彼女を予感させるようなものあります。クローグさんのその後の活動を知ってからこの作品に接しましたので、なかなか興味深いものがありました。