アメリカのジャズ研究家ジム・キッキングによれば、1970年代のオーネットの作品の中では、「アメリカの空」と本盤が重要な作品とのことです。
この作品は2つのセッションから構成されています。バーン・ニックス(g),チャーリー・エラービー(g),ルディー・マクダニエル(g),そしてシャノン・ジャクソン(d)と、1976年12月に吹き込まれたセッションが柱と言えるでしょう。『テーマ・フロム・ア・シンフォニー』が、2テイク収録されております。
もう一方のセッションは、1973年にモロッコで吹き込まれたもの。ロバート・パーマー(cl)とデュオで吹き込んだ1曲が収録されています。
陽気なメロディが印象的なアップ・テンポの『テーマ・フロム・ア・シンフォニー』。兎に角、コールマンが吹きまくってます。メロディを繰り返していると思ったら、アドリブに移り、気が付けばまたメロディへ戻っています。コールマンが言うところのハーモロディックの真意は分かりませんが、リズムの展開にも、自然に気持ちが入り込んでいきます。そして基本線は明るい雰囲気なのですが、細部では様々な表情を見せております。基本的にはファンクを取り入れたというのでしょうが、何やら複雑に絡み合った展開が奥に控えている演奏であります。
このコールマンの演奏は、これからのジャズ界に必要なものになっていくとでしょう。録音から30年経ってますが、全く色褪せないどころか、存在感が更に高まっている作品です。
しかしながらアルバム全体として語った場合には、2テイク収録した意味合いが不明になってしまいます。ギターの取り入れ方を若干変えておりますが、基本的には同じ演奏なのです。モロッコで録音の曲は、恐らく現地のミュージュシャンと共演したものですが、上手く民俗音楽を取り入れた内容になっております。アルバムとしての価値を考えた場合、『テーマ・フロム・ア・シンフォニー』は1テイクだけの収録にして、モロッコ録音を増やしたらと思いました。