2006年5月24日掲載
Eric Dolphy      The Illinois Concert
Blue Note原盤   1963年3月録音

 この年のドルフィーの公式リーダー作は、先に取上げた盤で触れました。またサイド参加の作品としては、フレディ・ハーバードやテディ・チャールス、そしてミンガスの作品に加わっております。ハーバードの作品はインパルスの『The Body and the Soul』です。これは3月8日,11日に録音されています。

 さて今日取上げる作品は、イリノイ大学での演奏です。1999年にブルー・ノートから発売されたもの。参加ミュージュシャンは、Herbie Hancock(p),Eddie Khan(b),J.C. Moses(d)。これに曲によって、イリノイ大学のブラス・バンドが加わっております。またハンコックは、マイルス・グループに加入する直前でありました。

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 2曲目には『Something Sweet, Something Tender』。これはドルフィー・オリジナルなのですが、レコード化という意味では、これが初になると思います。バスクラで吹いた短めの曲です。これから途切れることなく3曲目に移り、ドルフィー定番の、バスクラ・ソロでの『God Bless the Child』。これ以降もドルフィーお得意の曲で、かつドルフィーのオリジナルが続きます。4曲目は、フルートで『South Street Exit』。5曲目はアルトで『Iron Man』。6曲目は『The Red Planet』、7曲目は『G.W.』で、この2曲には大学のブラバンが加わってます。しかし、味付け程度なので、クァルテットの味わいが変わることはありません。

 これらの2曲目以降の演奏は、ドルフィーお得意の曲が並び、かつドルフィーも他での演奏と遜色見せない内容です。バランスの悪さはありますが、録音自体は実に良好。こんなに素晴らしい演奏が30年も眠っていたのは、実にもったいない話です。

 さて、気になったのは1曲目の『Softly As in a Morning Sunrise』であります。20分の演奏ですが、テーマ・メロディは、微かにそれらしきものが、2度ちらっと顔を見せるだけ。演奏自体は、ドルフィーがバスクラで熱の入ったもの。ドルフィーの後でソロをとるハンコックは、ドルフィーの作った熱気ある空間を維持するのに懸命な演奏です。

 この流れ自体はいいのですが、テーマ・メロディを極端に排除したドルフィーの姿は、実に珍しいもの。この辺りは、公式リーダー録音が少ない年ということに、何らかの関係があるのでしょうか。

 この年の暮れには、ドルフィーはコルトレーンと再び共演しております。今のところその音源は世に出てませんが、いずれはこの盤と同様に、日の目を見るかも知れません。それを期待しております。