2006年5月21日掲載
Art Pepper           Art Pepper Quartet’64
Fresh Sound原盤  1964年5月録音

 この作品が発売されたのは1991年のことですが、恐らく僕が買ったのは、1999年終わり頃だったと思います。渋谷ジャロさんの中古コーナーに置いてあったと記憶しております。

 またその頃はまだ maharl photo&jazz掲示板に書込みが多かった時期であります。そしてこれを聴いたのが、年明けて2000年の1月、当時の勤務地の塩山のアパートで、風邪を引いて寝込んでいる時のことでした。この盤をかけた時に耳に飛び込んできたのは、コルトレーン風の演奏。思わず maharl photo&jazz掲示板 に、「コルトレーン風のペッパー?」と題した書き込みを行いました。そうしましたところ、ある方から、この時期のペッパーは、コルトレーン風の、或いはモード風の演奏を行っていたと教えていただいたのでした。

 そんな思い出がある作品ですが、聴くのはその時以来ですから、6年振りということになります。1961年1月のヘレン・スチュアートとの録音を最後に、ペッパーには長いブランクがあります。麻薬常習者としての刑を宣告されて、サンクエンティンなどの刑務所に入っていたからです。

 1964年には一度出所して、サン・フランシスコで演奏を行いました。今日取上げる作品は、その時のもの。Frank Strazzeri(p),Hersh Hamel(b),Bill Goodwin(d) との演奏です。

20060521

 時代に取り残されまいと、必死にもがいている天才ミュージュシャンの姿があります。しかし、その天才は、心も体もボロボロの状態だったのでしょう。

 また共演ミュージュシャンも、天才には相応しくないもの。確かに、Frank Strazzeri は1970年にリバーサイドからリーダー作を発表する方ですし、Bill Goodwin は後年にはフィル・ウッズのバンドで活躍するお方。しかしながら、ペッパーの共演者としては、物足りないもの。このような共演ミュージュシャンを得るのが精一杯だったのが、このときのペッパーだったのでしょう。

 さて内容ですが、モードを取り入れようした演奏ですが、消化不良もいいところ。ペッパー作の『d section』では、そんなペッパーのもがきが表れております。この録音から1年経たないうちに、ペッパーはまた刑務所へ戻ります。やはり、麻薬に頼らなくてはならない精神状態だったのでしょう。その状態を、悲しいほどに理解出来る演奏です。