エリック・ドルフィーの公式リーダー作から本盤を捉えた場合、本盤の前は1961年7月の「ファイブ・スポット」と同年9月の「イン・ヨーロッパ」であり、本盤の後は1964年2月の「アウト・トゥ・ランチ」と同年6月の「ラスト・デイト」ということになります。
本盤のセッションはアラン・ダグラスによて行われました。そしてこのセッションからは、最初にフレッド・マイルス・レーベルから「カンヴァセイション」と題されて発売されました。その後すぐ原盤をヴィー・ジェイが買い取り、「メモリアル・アルバム」として発売されたのです。
その後プロデューサーのアラン・ダグラスが自ら興したダグラス・レーベルから、このセッションの未発表曲が「アイアン・マン」として発表されたのです。
さてこのセッションですが、1963年5月末から6月上旬にかけてNYで行われました。様々な編成で9曲吹き込まれました。参加者で目立つミュージュシャンは、クリフォード・ジョーダン(ts),リチャード・デイヴィス(b),ウッディ・ショウ(tp),そしてボビー・ハッチャーソン(vib)などです。本盤は、9曲の中から4曲収録されてます。
1曲目の「Jitterbug Waltz」は、ウッディの荒々しいペットと絡みながら、ドルフィのフルートが独特のうねりで展開されています。2曲目の「Music Matador」は、4管とベース+ドラムという編成の曲。楽しげな演奏の中で、ドルフィのバス・クラも実に楽しげ。ドルフィらしい凄みがないのが残念。一つ飛ばして最後の「love me」は、ドルフィがアルトでソロ演奏している曲。静かな語り口が印象的な演奏です。
そして白眉は、3曲目に演奏されている「alone together」です。バス・クラのドルフィと、デイヴィスのベースで演奏されている曲。二人の信頼感によって成り立つ静寂の中で、ドルフィしか提示できない演奏が、凄みを持って進んでいきます。
この作品は、ドルフィの作品群の中では語られることが少ないものですが、ドルフィを語る時に決して外せないものであります。